地域デザインPBLの活用事例紹介

データサイエンスを活用したPBL授業の展開

授業概要「地域デザインPBL」

専門分野の異なる7人前後の学生からなるグループが、観察・分析・発想・試作・評価を繰り返しながら、地域の問題解決に向けて主体的に取り組む授業です。

地域と協力しながらグループ学習やフィールド実習を行い、具体策を検討します。最終的には成果を口頭発表し、報告書に取りまとめを実施しています。

開講時期 3年3クォーター(10~11月)
担当教員数 11名(3学科)+DS特命助教1名
受講人数 約160名(必修授業)
協力団体 県内自治体、JA、自治会、大学生協、地元企業、NPO法人等

グループワーク

調査・意見伺い

授業スケジュール

各日90分×2コマ、全8回で構成。

第1回 ガイダンス&グループワーク
第2回 グループワーク
第3回 グループワーク
第4回 グループワーク
第5回 中間発表会(ショットガン&ポスター形式)
第6回 グループワーク
第7回 グループワーク
第8回 成果発表会(口頭発表形式)

中間発表会

成果発表会

地域デザインPBLのテーマ(2023年度)

11つのテーマを用意。テーマ1つにつきグループが2つ、担当教員が1名。

番号 テーマ
A 温度差を利用した発電で何ができるか?
B 富山の放置資源を活用して観光客を呼び込むアイデアとは?
C 富山の大雪を有効活用する新たなアイデア
D 富岩運河を活かした地域の魅力創出(発信)方法とは?
E 「ハト麦」のブランディング
F 多彩な地域資源と公共交通を活かした交通まちづくり
G 誰も取り残さない防災を実現するために私たちは何ができるか
H 資源循環による地域課題と活性化の解決手法の提案
I 休耕田を活用した田んぼアートの実現に向けて
J 地域のお出かけの足の確保方法を考える
K データから見えてくる富山大学生協の課題と対策とは何か?

事例1:避難経路と災害情報のGISによる可視化

事例概要
テーマ 誰も取り残さない防災を実現するために私たちは何ができるか
協力団体 砺波市栴檀山自治振興会、砺波市役所
取組内容 防災訓練を実施し、避難場所までの避難経路をGPSロガーで取得。住民が取得していた土砂崩れのデータ(紙媒体)をGISデータとして入力し、避難経路と重ね合わせて分析を実施。最終的には分析結果を地域の住民へ発表。

対象エリア:栴檀山地区(砺波市)

高齢化が進む中山間地域。2023年7月に豪雨被害によって、複数の土砂崩れが発生。

研究内容

①データ取得

住民36名にGPSロガーを所持していただき、自宅から避難場所となる公民館までの避難経路を取得した。
避難にかかった時間、経路、立ち止まった場所なども分析可能となる

GPSロガー

②データ分析

③地域への発表

避難経路のGPSによる可視化

事例2:IoTカメラを用いた動物出没状況のデータ化

事例概要
テーマ 誰も取り残さない防災を実現するために私たちは何ができるか
協力団体 砺波市栴檀山自治振興会、砺波市役所
取組内容 農作物の被害防止のためイノシシ捕獲用の檻へIoTカメラを設置。動物を感知し、LINEで通知するシステムを作成。 捕獲した場合に即時対応が可能に。また、熊や他の動物の出没状況も分析可能に。

対象エリア:栴檀山地区(砺波市)

高齢化が進む中山間地域。イノシシ捕獲用の檻が10箇所以上存在。

研究内容

①データ取得

檻への設置例

IoTカメラ

②データ分析

③地域への発表

撮影した写真の例:熊

イノシシ檻に小熊がつかまる事例も発生し、親熊がいる恐れもあることから遠隔で檻の状況を確認できることが重要。捕獲時には地元紙で掲載。
副次的に熊の出没状況や冬眠時期の推定などが可能となった。

撮影した写真の例:イノシシ

設置から2か月程度で10頭弱を捕獲。捕獲できなかった場合でも、餌を食べる様子などは撮影できている。 頭数や大きさ、餌の食べ具合などを組み合わせることで農産物の被害軽減への対策を考えることが可能となる。

事例3:AIカメラによる人流データの測定と分析

事例概要
テーマ データから見えてくる富山大学生協の課題と対策とは何か?
協力団体 富山大学生協、富山大学経済学部
取組内容 大学生協食堂出入口にAIカメラを設置し、人流データを測定。時間帯別の混雑状況を可視化したうえで、混雑解消策を検討。食堂の購買データとも組み合わせて、特定の商品の売り上げ個数や割合等を分析。

対象エリア:富山大学生協本店食堂

大学のメインの食堂で席数は約700席。昼食時には長蛇の列となるなど混雑解消が課題となっている。

研究内容

①カメラ設置

出口

入口

②データ取得

NEC社のFieldAnalystを利用。

人物の判別のほか、年齢や男女が推定可能。

③データ分析

事例4:GISと実験を用いた雪室の検討

事例概要
テーマ 富山の大雪を有効活用する新たなアイデア
協力者 都市・交通デザイン学科 竜田先生(実験協力)
取組内容 雪を大型のすべり台を用いて効率的に集めて、雪室を作るアイディアを想定。滑り台の材質を様々試して、実験から決定。その後、実験を元に雪すべり台の設置場所をGISを用いて積雪量や傾斜角から決定。

研究内容

①滑り台の傾斜角と材質実験

ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリプロピレン(PP)、ステンレススチール(SUS)の4つを用意した。傾斜角、雪の量、気温を一定として雪の滑る時間を計測。

②GISによる積雪量の可視化

③雪滑り台の設置場所の検討

④考察

実験結果を元にした位置の決定。雪すべり台の設置場所の条件は、山の麓に雪室の敷地面積が確保できることに加え、山の斜面に雪すべり台の面積が確保で、かつ平均傾斜角が17°以上であることが挙げられる。GISを用いて、26.5°の滑り台の位置を決定。

事例5:雪を融かして水力発電

事例概要
テーマ 富山の大雪を有効活用する新たなアイデア
協力者 都市・交通デザイン学科 竜田先生(実験協力)
取組内容 雪捨て場や年間降雪量をGISを用いて可視化した後に、融雪後に水力発電することをアイディアとして考えた。その後、融雪剤としての塩化カルシウムの量、濃度や散布方法を実験をすることで、効率的な雪の融雪方法を検討した。

①GISによる可視化

最深積雪と雪捨て場の分布を重ね合わせGISで可視化。

雪が多いであろう雪捨て場を調査。

データ
気象庁、県道路除雪計画など

②融雪実験

  1. そのまま放置
  2. 塩化カルシウム50gを上から散布
  3. 塩化カルシウム30gを雪の下に散布
  4. 霧吹きで水を上から散布
  5. 霧吹きで塩化カルシウム水溶液を上から散布

塩化カルシウム水溶液の濃度によって、溶け方に違いが出るのかを検証するために、濃度を約10、20、30%と変えてそれぞれ測定を行った。

③考察

実験結果の考察。融雪剤を直接散布する方法と水溶液にして霧吹きで散布する場合を方法したところ、両者の溶かす速さには大きな差はなかったため、水溶液として使用する方が塩化カルシウムの使用量を削減できると考え、塩化カルシウム水溶液を利用。

濃度約10%の塩化カルシウム水溶液を使用することに決定。