都市・交通デザイン学科

段ボールで防災の課題解決を!

災害が発生すると、普段の生活とはまったく違う「避難生活」を余儀なくされます。このような課題に対して、都市・交通デザイン学科の1・2年生107名が段ボールを活用した解決策を模索するグループワークを実施しました。これは、国立立山青少年自然の家において、令和5年7月9日の10時30分より約3時間(昼食休み1時間を除く)をかけて、グループごとに避難生活をイメージし、課題の特定を進め、段ボールの特性を理解した上で、解決策となる作品を製作しました。製作条件は「中サイズ段ボール1箱、小サイズ段ボール1箱、ガムテープ1本でできるもの」としました。最後にはアピールプレゼンと称して、製作した作品について1分間のプレゼンを行い、学生による投票を通して、上位3作品を表彰しました。

ことのきっかけは、富山市に本社のある段ボール・メーカー「サクラパックス株式会社」からの産学連携の依頼でした。サクラパックスでは、これまで防災に役立たせる段ボールの可能性を探ってきましたが、都市・交通デザイン学科の教員とともに、新しい活用方法を見いだしたいというものでした。しかし、防災の専門家ではどうしても固定概念が強く、柔らかく自由な発想には至らないところがありました。そこで、多くの学生が集まる立山合宿研修の場を活用し、学生のアイデアを学ばせていただくことに至りました。

いざグループワークが始まると、1・2年生は災害・防災についての授業をまだ履修していないこともあり、なかなか作品のイメージがつかず、重々しい雰囲気でした。しかし、2011年の東日本大震災やそれ以降の様々な災害を経験した学生も多く、すぐに議論は活発化しました。各グループは1・2年生混合でしたが、学年の隔たりはなく、率直な意見のぶつけ合いがなされました。避難所の様相をイメージし合い、どのような状態になるか、どのような人が困るかについて想定し、具体的な解決策の案を色々と出し合いました。その中から、これだと思う1つのアイデアを取り上げ、作品として製作を進めました。

製作過程においても、単純なものづくりではなく、様々な工夫を追加し、試作を重ねました。段ボールの使用を最小限におさえる工夫、逆に最大限に活用し快適な作品とする工夫、また、ガムテープすら使わないような工夫など、その幅は非常に広いものでした。各学生が持っている経験や知恵、授業で学んだことなどを大いに発揮し、たとえ同じ類いの作品であっても、どれひとつとして同じものはありませんでした。機能性の充実だけでなく、利用者が楽しくなる工夫が施された点には、教員たちも感服させられました。学生たちも、頭と体をフルで動かし、終了時間を迎えたときは、達成感と疲労感で放心状態でした。

最終的には、1つの作品が群を抜いた投票を獲得しました。これは、履き心地を重視したスリッパです。スリッパという単純な作品と思いながらも、床が堅く冷たい避難所をイメージし、段ボール内の波部分(フルート)のクッション性を活かし、複数枚を重ねて厚底にするという工夫が施されていました。2位の作品は安眠カバーです。これは、思いやりを意識したコミュニケーションボードの追加や、組み方を変えることで小さな台として利用できる機能を追加するという工夫が施されていました。3位の作品はスマホのライトを活用したライトスタンドです。水のペットボトルとの併用が求められますが、避難所だけでなく停電時の在宅避難まで視野に入れ、リラックス効果や安心感を誘発する点を意識したユニークな作品でした。4位以下の作品も、ブロックの組み合わせで様々な形の棚になる作品、折りたためるベビーチェアなど、どれも優劣のつけがたい作品ばかりでした。

まだ災害や防災について専門的な知識を学んでいない学生たちでしたが、本当に熱心に取り組んでくれ、面白いアイデアや興味深い工夫が多く見られました。グループワークを通して、学生たち自身も計画的な行動や役割分担の重要性を学んでくれたものだと思います。防災、特にソフト面からの防災では、1つの確たる正解があるものではありません。このようなグループワークやワークショップを通して、もっとも納得性の高い方策を見つけ出すことが重要です。その体験を得てくれたことは、今後の防災の未来も明るくなると強く感じました。本学科では、授業や課外学習においても同様な取り組みを推進し、学生自身の潜在的な能力を最大限に伸ばしていきたいと考えています。

※本取り組みにつきましては、サクラパックス株式会社の多大な協力の下、段ボールの提供を受けました。この場を借りて、深く御礼申し上げます。


アイデア出し(修士学生の助言を受けながら)


作品製作風景(1・2年生混合)


最優秀作品「Amazing Slippers」


第2位獲得作品「3刀流プライベートカバー」


第3位獲得作品「ライトマン」

2023.07.19 新着情報