地球システム科学科

2021年1月7-10日にかけての富山の大雪について【安永数明】

2021年1月7日から10日にかけて、北陸では記録的な大雪となりました。富山市内でも積雪の深さが最大128㎝にもなり、市電の停車駅も雪で埋まってしまいました(写真1)。最低気温は-3℃近くまで下がり、最高気温も0℃を上回らない真冬日が2日ほど続いたのですが、これは2018年1月26日以来のことです。このように確かに温度は低かったのですが、日平均値としてもっと気温が低い日は他にもありますし、(ここまで下がらなくても)最低気温が0℃以下になることも富山ではそんなに珍しいことでもありません。では、なぜ今回はこのように大雪になったのでしょうか?それに一言で答えるのは簡単でないのですが、理由の1つに日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)の存在があります。

日本の四季は、夏には南西寄りの風、冬には北西寄りの風といった具合に、季節ごとに違った方向から風が吹きます(こうした風のことを「季節風」、もしくは「モンスーン」とよびます)。陸は海よりも暖められやすく、冷めやすいという性質を持っていることにより、冬の大陸上には、-30℃にもなる強く冷やされた空気があります(図1)。この冷たい空気は、冬の季節風である北西からの風にのって、大陸から日本海を渡って日本に向かってやってきますが、朝鮮半島北部の山脈の影響により流れは強制的に二分され、日本海で再び合流します。そこでは強制的に上昇気流が生まれますので、雪を降らせる積乱雲が強く発達することになります。これがJPCZとよばれる収束帯で、冬型の気圧配置のときには衛星による雲画像でも、発達した積乱雲の様子がハッキリと確認することができます(図2)。

JPCZは、いつも同じところに発達する訳ではなく、上空の寒気や偏西風などの影響を受けて、島根や鳥取の中国地方に向くときもあれば、逆に先端が北陸地域に達することもあります。このJPCZの掛かる地域では降雪量が特に多くなりますので、冬型が強まるとその動態はよく注視されます。しかしJPCZの発達自体は、それほど珍しいものでもありませんので、今回の大雪を説明するには不十分です。では今回のJPCZには、何か特別なことがあったのでしょうか?

例えば、2018年1月11日から12日にかけて富山では、57㎝の降雪(最深積雪は60㎝)がありました。その時には、積乱雲が数100kmの渦を巻きながら北陸の沿岸域にやってきて強い降雪をもたらしたのですが(動画参照*更科2020より)、今回の降雪ではそのような渦巻き状の積乱雲群の様子は見られませんでした。その代わり、富山にやってくる雪雲の上流にあたる福井のあたりの海面温度が平年よりも1℃ほど高く15℃程度になっていました(図4)。14℃と15℃では飽和水蒸気量が5%ほど違いますので、もしかするとこの高い海面温度が影響を及ぼしたのかもしれません。より正確に定量的に評価するためには、数値実験などを行う必要がありますが、2018年の事例でも海面温度を領域全体的に上げた場合に、降水量、降雪量の顕著な変化はJPCZのところに集中するような結果が得られていますので、今後もこうしたJPCZに伴う豪雪災害には注意する必要があります。

写真1:2021年1月7日から10日の大雪時の市内電車の停車駅(丸の内)

図1:冬における平均的な地上の気温(シェード)、気圧(コンター)の分布、および風向・風速(矢印)


図2:大雪時(2018年2月6日12時)の雲の発達の様子と、大気の流れと雲の発達の模式図(”ひまわりEYE“より。一部加筆)。

図3:海面温度の平年値からの差(左:2018年1月上旬、右:2021年1月上旬)。気象庁HPよりダウンロード。

図4:2018年1月10日-12日の大雪事例において、海面温度を人為的に1℃上昇させて行った数値実験の結果(左:期間平均降水量の増減率、右:期間平均降雪量の増減率)。

動画:XRAIN合成雨量とAMeDAS積雪深


2021.01.22 コラム