都市・交通デザイン学科

首都高速道路の現場見学に行ってきました!

2020年2月19日から20日の二日間にわたり、川田建設株式会社様の案内で、首都高速道路の現場と会社を見学させてもらいました。19日は、神奈川県川崎市内の首都高速道路で行われている(修)上部工補強工事3-210の現場を見学させていただき、20日は東京都内の川田建設株式会社本社に伺い、会社概要の説明と職場見学をさせていただきました。

1日目は、神奈川県川崎市で施工する、首都高速道路株式会社発注の全長約2㎞に跨る上部工補強工事の現場を見学しました。現在、首都高速道路は供用延長が327.2㎞、経過年数割合は40年以上が4割以上(【50年以上】21.8%、【40~49年】20.6%)あり、全体として高速道路の高齢化が進んでいます。今後も継続して利用するには、建設時に比べて大型化する車の重さ、台数等の利用環境、大規模災害の発生などから橋を守る為に求められる性能が変化しており、現状に合った補修・補強が必要になるとのことです。工事を取り巻く環境についても教えていただき、都市部での補修補強工事の作業環境は、私たちが想像していた以上に大変なものだということを知りました。
見学のはじめに、現場所長と監理技術者の方から工事概要と損傷の内容について説明していただきました。車が走る床版には繰返し荷重による「ひび割れ」、中の鉄筋がさびて膨張する「鉄筋腐食」、さらにこれらの損傷によりかぶりコンクリートが剥落して鉄筋が露出する「鉄筋露出」等があり、鋼部材には腐食のほか、繰り返し荷重により溶接部等に生じる「疲労き裂」などがあると説明を受けました。
RC床板補強工の説明では、炭素繊維シートでの補修補強について教わりました。炭素繊維シートとは、比重は鉄の約1/5と軽量である一方で鉄の約10倍の強度があり、さびや塩害等の腐食の心配もないというものです。首都高速道路で行う床版の炭素繊維補強では、橋軸方向・橋軸直角方向に格子状に貼ることで、床版強度を高め、炭素繊維シートを少なく費用を抑え、格子の隙間の監視窓から、ひび割れ点検が出来る利点があるそうです。

説明を受けた後、上部構造(桁内部)に入り、損傷部分を見学しました。実際に桁の中に入ってみると思っていたよりも狭く、暗いものでした。そして、その上には高速道路上を走る車が通っているため、常に揺れている感じがしました。そのような現場での作業は、狭い空間であるため機械が入らず人の手でやるしかないそうです。高齢化している日本の橋梁の補修は、人手に頼ることが多く、なかなか進まないのが現状だと感じました。
巨大な橋梁の中から、1mmにも満たない金属の損傷(き裂、腐食)や、コンクリートの損傷(ひび割れ、鉄筋露出、漏水、遊離石灰)を探す、補修補強工事のための点検・調査作業はとても大変であると感じました。床版の点検では、コンクリートの浮きや空洞を探す作業を打検棒というローラーのようなものを転がしたり、金槌で叩いたりして、音の違いを聞いて損傷部分を発見しているそうです。見学の際、私たちは実際の「ひび割れ」、「き裂」、「腐食」などを間近で見ることができました。また、ハンマーで打音の違いを体験し、広範囲を点検するのはとても大変だと感じました。またこの狭い空間の中で作業をし続ける困難さも実際現場を訪れたことにより少し理解しました。

今回の見学で強く感じたことは、都心部で工事を行う難しさです。見学中も車両が通行する音や揺れが響いていました。首都高や周辺の一般道に交通規制を行うことは交通量などから非常に難しく、また事務所や資機材置き場を現場の近くに設置することも難しいそうです。また、今まで見学してきたダムやトンネルといった郊外の工事現場以上に、騒音や景観など周辺環境に配慮しなければならないことも多いとのことでした。普段は何気なく使っている道路や橋、トンネルなどのインフラが、維持管理、補修・補強、点検をしてくださる方々(複数企業)がいるおかげで私たちの生活が成り立っているのだと感じました。
現場見学が終わると、社員の皆さんと懇親会があり実際に川田建設で働いておられる方々から仕事内容や進路選択の流れなどについて聞きました。このような機会はなかなかなく実際に働いている方から生の声を聞けるとても貴重な経験となりました。
2日目は東京の板橋にある川田建設さんの本社に社内見学へ行きました。会社の概要説明を受けた後、社員の方が多く働いているオフィスを見学しました。たくさんの方がパソコンに向かって作業をしておられました。施工現場とは全く違う光景がそこには広がっていました。奥のスペースには日本全国の工事現場の中継を映せるモニターがありました。作業の進捗状況などを確認するそうです。

2日間の現場見学を受けて私たちは多くのことを学びました。大学の講義を聞いて得る知識だけでは実際の現場でどのようにその得たものが活用されているかという経験がどうしても乏しくなってしまいます。ですので、実際に現場を見て講義と照らし合わせる作業はより講義の内容を深める結果につながると感じました。これからもこのような経験を通して視野を広げたり、興味を深めたりして、自分の進路選択に活かしていきたいと思います。お忙しい中、見学会を開催してくださった川田建設株式会社の方々、本当にありがとうございました。

2020.04.17 新着情報